人間関係を円滑にするためのヒント

● 人間関係を円滑にしていくために

 看護師はチームで医療を行っていきますから、人間関係がギクシャクしていては質の高い看護の実践の妨げになってしまいます。話し方や態度、職場の風土を改善していくことで人間関係がより良く変化します。
 具体的にはどのようなことに着目して自分自身の改善や職場改善を行っていけば良いのでしょうか。

● やっぱり「ホウレンソウ」

 人間関係を円滑にしていくために必要なことは、やはり「報告・連絡・相談」を密にする「ホウレンソウ」が大切です。
 ただ、通常の業務上必要な報告や連絡、相談だけではなく、さらに一つ工夫すると職場の雰囲気が大きく変わります。
 直接面と向かって褒められることも大変嬉しく感じるものですが、「○○さんがあなたのことを本当に熱心な看護師だと褒めていたわよ」とほかの人からの伝達で聞くこともたいへん誇らしく感じるものです。ただの報告だけではなく、同僚や患者さんの行動で素晴らしいと感じたことも伝えるようにしていくと驚く程の効果が見られます。褒め合い認め合える空気をチーム内に作っていくことで、「より自分らしさを発揮できる職場」「認め合い信頼しあうことができる関係」が醸成されていきます。意外なことですが、一人が始めただけでもこの効果は次第に広がっていきます。
 担当している看護師だからわかる状況の変化やリスクについての懸念があります。事務的な報告だけではなく、現場にいる自分だからこそ感じた事も報告することで、患者の急変や現場のリスク軽減に対応することができるようになります。
 「前の病院ではWチェックかきちんと出来ていたんだけど…」という思いがあるのなら、はっきりと口に出し自分から一つ一つ実践し、良い習慣を広めていくことも必要です。

● 嫌われる話し方をしていませんか

 自分では丁寧に心を込めて話しているつもりなのに、なぜかコミュニケーションがうまくいかないといった悩みはありませんか。
 癖というものは自分では気づきにくいものです。気をつけているようでもついやってしまう普段の癖の中に、相手をゲンナリさせてしまう原因があるかもしれません。
 嫌われてしまう癖としては、「つい自分の昔の話や自慢話をしてしまう」「相手の話を途中で遮ってしまう」「話が長い」というものです。心当たりがあるものからちょっと我慢するようにしていくと、次第に改善していくことでしょう。

● 相手の話をじっくりと聞く

 特に大変効果が高いのは、「相手の話をじっくりと最後まで聞く」ということです。話ベタな人の場合は、途中で「それって、○○ってことだよね」「そういえばさあ」などといって、相手の話の腰を折ったり、全く関係のない話に話題転換したりするのは御法度です。時間がない~、イライラっとくるかもしれません。きっとこういう話なのよねと続きや結果が100パーセントわかっている状態であっても、少なくとも相手の話題がひと段落し、言い切ってしまうまで待つ辛抱が必要です。癖を直すのは大変なことですが、「相手の話を遮らないルール」を自分に作って意識して守るようにしてみます。すると、言い終わったあと「ちゃんと話を最後まで聞いてくれた」という満足気な表情をすることがあります。くれぐれもイライラとした表情を出さないように気をつけてくださいね。

 イライラジリジリしたとしても相手の話を最後まで聞くと「自分の言いたいことも伝わりやすくなる」という効果があります。話を遮られたとき、相手は言いたいことが心の中でぐるぐるしている状態です。つまり、相手に聞く余裕があまりない瞬間でもあります。相手が本当に伝えたいことは話の最後にあります。それを言い切ってしまうまでは我慢して聞きましょう。「あー、この時間があれば…」と心の中で思ってしまいがちですが、相手の話を聞きながら、自分の話の話題を整理して伝わりやすく話す準備をすることもできます。

 最後まで話を聞いたあとには多くのメリットが得られます。言いたいことを全て言い切ったあとは「あなたはどう思う?」と聞く体制が100%できています。だから、最後まで聞いた後の方が、あなたが本当に言いたいことをしっかりと聞いてもらえるチャンスでもあります。最後まで話を聞いてくれたという信頼度が1ポイントアップします。これは我慢するだけの価値があります。

● 聞き上手の体制は努力で作れる

 子供の話を背中で聞いてはいませんか?子供の話を聞いてあげるのと同様に同僚や患者さんの話を聞いてあげるときにも意識して聞く体制を作ることが必要です。大切なのは笑顔と相手の方をきちんと向くということです。真正面で見つめ合うと気恥ずかしくなりますので、ちょっと斜めの体制で顔の頬や眉毛などを時々意識してみるようにします。なにか作業をしながら話を聞いている時も、ちらっと顔を見る仕草をすることで「ちゃんと聞いているな」という印象を与えることができます。
 相手の話の途中で、「なるほど…」「そうなんですね…」等の相槌を入れていくと「ちゃんと聞いてくれるんだなあ」という印象を与えることができます。「それは良かったですね」「それは辛かったでしょう」といった相手の気持ちを受け止める言葉を発することもとても効果的です。共感する言葉を要所で入れていくことで相手は話したあとに「じっくりと話を聞いてもらうことができた」「この人は私のことをわかってくれる人」という満足感と良い印象を与えます。
 本当の聞き上手の人は、相手の話を引き出す絶妙な間を作っています。おそらく生来持った雰囲気もあるのでしょう。周囲にそういう方がいたら、ぜひ観察して技術を学んでみてください。
 さらに詳しい「話し方の改善点」に関しては、以下のサイトにまだまだたくさんヒントが掲載してあります。とても参考になりますので、よろしかったらご一読ください。
⇒ http://thechange.jp/talk7-6146.html

● 正しい敬語を使えるようにする

 若い人で明るく生き生きしていてとても人が良さそうなのに、敬語が使えない残念な方がいます。驚くべきことに明らかに先輩で年上とわかる人に対しても一切敬語を使うことができません。しかも、本人は「敬語を使うとよそよそしい感じがする」とすら思っているようです。もったいない。とても損をしているなと残念に思ってしまいます。 厳しい教育を受けている看護師の中にもそういった方がいます。おそらく本人は患者さんと仲良くコミュニケーションをとっているつもりなのでしょう。けれどもその会話を聞いているほかの患者さんは「礼儀を知らないな…」「男性にだけ馴れ馴れしい看護師だな」という不快な印象を持っている場合もあります。敬語を使えないことはイメージダウンにつながってしまいます。

 自分より年上の人に自分の真心をわかってほしいのなら、やはりどんな場面であっても敬語を使うことが必要です。ちょっと間違っても構わないから丁寧な言葉を使おうとしている姿勢が大切です。
 「です」「ます」調で話すように気をつけていると次第に敬語を使う力が付いてきます。なぜなら「です」「ます」に似合う言葉を使うように自然となっていくからです。
 「うち、こっちいくから、じゃあ、またね」という言葉は「ですます調」を使っていれば絶対に出てきません。「私はこちらの方向ですので、それでは失礼させていただきます」という言い方に自然となっていきます。
 敬語を自然に使いたいと思うならば、ラジオを頻繁に聞くことをおすすめします。会話の中に自然な敬語が使われています。ラジオでは年齢、職業、様々な人が出演します。初対面の人であっても明るく楽しい会話が弾んでいるのに驚かされます。ラジオに出てくる言葉の使い方を参考にすると年上の人との会話も弾むようになってくることでしょう。
 
● さらに上級のありがとうとごめんなさいを

 何でもかんでも「ごめんなさい」という言葉を使っていると、聞いている人全てに「この人できない人なのね」「自信がない人なのでは」という印象を与えてしまいます。「ごめんなさい」という場面でも、実は「ありがとう」「助かりました」「お陰様でした」と言い換えることができる場面もあります。
 本当に「しまった!」と思ったとき以外は、できるなら感謝の言葉に変えてみるように気をつけてみましょう。言われた方もとてもいい気持ちになりますし、自然に笑顔でコミュニケーションをとることができるようになりますし、相手もごめんなさいと言われた時よりもホッとします。
 さらに上級のごめんなさいの使い方もあります。しまったと思ったとき、ただの「ごめんなさい」だけでなく、一言添えるようにしてみます。例えば、「あなたから事前の報告を受けていたのに、ごめんなさい」といえば、相手が気遣っていてくれたことを認める話し方になります。
 ありがとうもさらに上級の使い方をするならば、今の気持ちを素直に表す言葉を一つ付け足してみましょう。プレゼントをもらった時に「ありがとうございます。ずっと欲しいと思っていたんです」と付け加えると、あなたの気持ちもさらに伝えやすくなります。

● 人の話を聞くために足を止める勇気を

 「あの時もっとじっくり足を止めて話を聞いていれば…」

 あるベテラン看護師さんが、夜間の見回り中に外出禁止になっているはずの中学生が歩いているのを見つけて注意しました。すると「家に電話を掛けさせて欲しい」と言ってきたそうです。夜間であることもあり、「明日電話しましょうね」と軽い気持ちで言ったそうです。ところが残念なことにその晩に急変しその中学生は亡くなってしまったそうです。虫の知らせでもあったのでしょうか。
 その看護師は、それからずっと「人の話を聞くために立ち止まる勇気を持とう」と固く決意したそうです。病院では「もしあの時…」何度後悔してもしきれない場面に出会うことが何度もあります。どんなに疲れていても、どんなに忙しくてもあの時立ち止まってあげたらという瞬間はあるものです。
 悩みを抱えている後輩の看護師もそうです。あの時話を聞いていればやめなかったかもしれないということもあるでしょう。そういう瞬間を逃さないように第六感がざわついた時には、きちんと足を止めて話を聞くことを記憶にとどめてあげてください。

★ 話し方で人間関係が変わる 即効果がある話術
⇒ http://thechange.jp/talk7-6146.html

★ 聞き役に回ると説得上手になる
⇒ http://diamond.jp/articles/-/3832